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2010年05月27日(Thu) 【兆候<７>】 なに？ 言っていることが分からない。急展開すぎる。流れが速い。日本の川かあなたは。 「僕の部屋に大麻？言い訳をさせてもらいますけれど、僕はこの通り、健康な体ですよ。麻薬なんて一度たりとも使ったことありません。まぁ、麻薬なら一度使ったら中毒になるから、一度使うのも何度使うのも変わんないんでしょうけど」 「おいおい、それで健康状態？何言ってるんだい。麻薬は使わなくとも、持っているというそれだけで罪に問われるんだぜ。」 「あぁ、そういえばそうでしたね。理不尽な世の中です。僕、大麻を持ってた自覚なんて無かったですのに、不思議ですね。」 「同意を求められても困るよ。薬物乱用で、記憶がぶっ飛んじまったんじゃねぇのか？」 「その確率は極めて低いですね。病院に行けば分かります。僕が今問われるべき問題は、薬物を所持していたと思われているということですよ。」 「回りくどい言い方だな。とりあえず、ここでこんな物騒な話をしても仕方がない。一旦署まで来てもらわないとな」 「ええ、嫌ですよ。だって僕、このリビングの役人を勤めなければならないですからね。家族の誰かがこの部屋に入って、僕の部屋が抹消されていることに気付いたら、口の中が飽和水溶液状態になりますからね」 「はぁん、そうかい。まぁ実を言うと、俺もお前を逮捕しようなんざ、実は全く、これっぽっちも、全然、さらさら考えてないんだよな」 「え？そうなんですか。そりゃまた、どういったご理由で？もしかして、僕の体をどこぞやの闇組織にでも売り飛ばすつもりなんですか？」 「近いっちゃ近いが、似て非なるもんだな。何れにせよ、俺もお前もそれなりのリスクを負わなきゃならない。それと、ノーリスクで逮捕はどっちがマシかな？」 「リスクのかかる方を具体的に教えてくれないと、何とも言えませんね」 「俺と取引をしてほしい」 「取引？僕が取引できるものなんて、服か臓器くらいですよ」 「モノじゃなくていいんだよ。よく考えてみな。見ての通り、ってか、まぁ俺は一応、地方公共団体に雇われてる身だ。公務員とか言うんだっけ？その公務員ってのは、それはまた厳しいことに、原則副業は禁止なんだよ。にも関わらず俺はこんなバイトやってっからな。それに、コンビニやスーパーでのバイトならまだしも、殺人やら人体実験の絡んでくるバイトなんて知られちゃあ、懲戒免職じゃあ済まねえからな。俺がお前を逮捕して、お前が署に行った時、署員の誰かに、この人は公務員でありながら、かなり危ないバイトしてますよ、と言えば、俺は廃人にならざるを得ない。だからさ、お前の部屋に大麻があったことは隠密にしておくからさ、俺の危ないバイトのことは、黙っててくれねえかな？」 「ちょっと待って下さい。一回整理しないと･･･。でも、その話からすると、色々と矛盾する点が出てくるんですけど。例えば、あなたが僕に何の縁も持とうとせず、ただいきなりある日突然、あなたの部屋に大麻がありました、とだけ言いにくれば、僕にあなたの危ないバイトのことが知られずに済むでしょう？なんでわざわざ、僕に殺人やら依頼やらの話をした後に、そんな話をするんですか？」 「いきなり核心をついた質問だな。よし答えよう。実はよ、お前の部屋に大麻があるから、部屋ごと破壊するように依頼したやつが、いるわけだ。そして俺はそいつの依頼通りにお前の部屋を破壊して、この大麻だけを持ってきたわけなんだが」 男は再びそのサイコロのような、いわゆる大麻を取り出し、手にとって、複雑な表情で眺めながら続ける。 「そいつが、依頼料を払わねえんだよ。こんなバイトなもんで、実は書面での契約なんかは一切ないし、訴えることもできない。できたとしても、非合法な仕事だから俺も危ない。」 「なるほど、なんとなく分かってきました。ですが、どうして僕の部屋ごと破壊する必要があったんでしょうね？その大麻だけを探して来れば、何の問題もないでしょうに」 男は、僕のこの問いに、さっきより数段複雑な表情を浮かべ、そして言った。 「その依頼主が、お前なんだよ」 23:55 ｺﾒﾝﾄ(0)/ﾄﾗﾊﾞ(0) [ｺﾒﾝﾄを書く] 重要なお知らせ@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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